バラは枝を切ることによって新芽伸びて花をつける植物です。またその枝は3年ほどで花がつきにくくなってきますので、新しく発生する枝(シュート)と入れ替えて古い枝を準じ根元から切ることで、常にたくさんの良い花を咲かせることが出来ます。もちろん剪定をしなくても花は咲きますが、花が小さくなったり、樹形が乱れたり、さらには枝が込み合って風通しや日光が届かなくなったりして、病気が発生し易くなって、株全体が弱ってしまうことになります。バラの剪定は良い花を咲かせるだけでなく、株をいつも元気に若々しくしておく上でも重要な作業です。

1.HT/F/Min

1)HT ハイブリッド・ティ

@本剪定前の枝の整理
秋の花はあまり長く樹で咲かせずに、花弁が散り始めたらできるだけ早く花首のところでカットし3枚葉もできるだけ樹に残し、わずかな期間でも来春に備えての栄養の蓄えが十分できるようにします。12月以降、平均気温が7℃を下回るようになると休眠の準備に入り、葉の色が代わったり、落葉を始め、4℃を下回るようになると、休眠に入ります。
その頃に鉢物の植え替えや地植えのものでも寒肥のすき込みをしますので、そのタイミングで予備剪定を行います。高すぎる枝を作業がし易い高さに切り詰め、細い枝や枯れこんだ枝もすべてこのとき剪定します。

A冬の本剪定
a. 本剪定は遅くも2月中旬までに(関東標準、地域によって前後する)新芽が動き出す前に済まします。まず仮剪定で整理し切れなかった、細枝や病気の枝を刈り取ります。

b. 次に昨年発生した新しいシュートが十分充実していて、一方3年以上の古い枝がある場合は、その古枝を付け根から切り取ります。その際枝が太すぎて鋏がきかない場合は無理に切らずに刃の粗いノコギリを使います。

c. 残った枝は昨年伸びた枝の充実した芽あるいは根元から20〜40cmのところぐらいまで切り詰めますが、その際以降の成長をイメージして枝の欲しい方向へ伸びる芽の7mm前後上で、斜めに鋏を入れます。なお基本的に芽の向きが株の中心ではなく外側に向いているものを選んでください。内向きの芽を選ぶと枝が重なったり、株の中心の風通しが悪くなったりします。全ての枝に鋏を入れれば剪定完了です。
 
B花後の整理
花が咲いたあとの剪定はいわゆる花がらとりの剪定で、花後速やかに行います。長く咲かせればそれだけ次の芽の伸長が遅れ、次の花が遅くなりますし、枝の伸長に使われるべき養分が花で消費されてしまいます。また種子を採る目的がないのに花が散ったままの状態にすると、結実して、その枝でのその後の花は期待できません。さらに花びらが散ると病気が発生しやすくなったり、掃除をするのも手数がかかります。(散りしきった風情を楽しむ場合は別ですが)散りかける前に花から下の2つ目あるいは3つ目の外に芽の向いた五枚葉の上で選定します。ただしその部分の枝が細すぎる場合や、下部全体のバランスを低めに保ちたい場合また切花にするためある程度の長さの枝が欲しい場合は必ずしも2つ目にこだわる必要はありませんが、後の生育のためにも出来るだけ多くの葉を残すことが重要です。こうすることで秋までにあと2回ほど花を咲かせることが出来ますが、3回目の花が咲く頃は盛夏になり暑さで株も消耗しますし良い花が望めないため蕾を見つけ次第摘蕾し、秋の開花に備えます。
また花後、株元からベーサルシュートや枝元からサイドシュートが伸びてきますが、
これらは蕾が見えるか見えないかの頃に5枚葉を5〜6枚分残してピンチし、以降秋の花の蕾がつくまで2段目、3段目と同じ事を繰り返します。

C夏の剪定
夏の剪定は整枝といい、伸びすぎた枝を整え、秋の開花のための剪定です。伸びた株を3分の2くらいの高さになるくらいのところを目安に(春に伸びた最初の枝の上方もしくは2番目の枝の最適な芽のところ)、五枚葉の上で剪定します。このとき病気になった枝や細すぎる枝、内側に向いて伸びたふところ枝なども整理します。ただし5月以降病害虫が発生したりして葉の量が少なくなってしまった株は、高さをつめることよりも、葉をいかに多く残すかを考えて剪定したほうが以降の生育や開花のために良いので、注意してください。

D花後の整理
秋の開花は、春の開花に比べ一斉に揃わず、初冬まで咲いて行きます。従って花が概ね開ききったものから花首のところでカットします。以降落葉するまでの1ヶ月くらいが冬と来春の開花に向けての養分を蓄える最後のチャンスですので、出来るだけ多くの葉を残し三枚葉すら切らないようにします。
 

2)F フロリバンダ

フロリバンダの剪定は、時期、剪定の仕方もほぼHTに準じますが、特長である花の多さを確保するために冬剪定も夏剪定もHTよりは浅く剪定します。ただし込み合った枝や細過ぎる枝、病気の枝はきちんと整理しましょう。また花が多く付くので花がらつみをこまめにしないと開ききった花が茶色くなって美観を損ねるばかりか病気が発生し易くなります。

3)Min ミニチュア

基本的な剪定の仕方はHTと同じなのですが、ミニュチュアは枝も細くこまかいため、個々の枝を一本一本というのではなく、株全体の形状を整えるつもりで剪定します。ただし全ての枝に鋏を入れることは重要なので冬の剪定は下部全体を3分の2もしくは半分位に縮小するつもりで鋏を入れます。当然込み合った部分や病気の枝は付け根の部分からカットします。花が咲いた後は花首を摘む程度にして、以降株全体の形を整える程度の剪定で冬を迎えるようにします。ただしこの場合春の開花以後はパラパラと花が咲いていく感じになりますので、秋にある程度まとめて花を付けさせたいときは夏剪定を浅めに行い全ての枝に鋏を入れます。

2. オールドローズや原種(シュラブ樹形)

オールドローズは原種の特性を色濃く受け継いでいるものが多いため、原産地の気候風土に近いところで栽培した場合は、大した手入れをしなくても程よい形にまとまるものですが、日本は夏が蒸し暑いせいか枝が余計に伸びる傾向があります。従って樹形を整える程度の剪定と、枝が混み合ってきたときの枝すかしなどの剪定が必要です。逆に枝が伸びることを利用して、シュラブながらもつるバラのように仕立てることが可能な品種もありますので、それぞれの特性や用途に応じた剪定をします。

  1)一季咲き性の品種
(ガリカ系、アルバ系、センテフォリア系、ダマスク系の一部)

@ 冬の剪定
1月〜2月初旬に行います。株全体を見て主幹が増え密になりすぎた部分がある場合のみ、古い幹を付け根から切り取ります。それ以外は主幹からでた枝が絡み合っていたり、病気になっていたり、極端に細い枝(ただしこのタイプのバラはHTなどに比べかなり細い枝でも花がつくものがあります)を整理します。最後に全体のバランスを直し花の咲く位置を調整するために、2分の1から3分の2程度、品種や前年の伸び具合により異なりますが、目安として昨年花が咲いた位置位の高さになるよう枝先を剪定して完了です。

A 夏の剪定
春の花が終わる頃から、花の下の芽が伸び葉を展開します。そのため8月下旬頃になると、樹形が乱れ葉も混み合ってきます。こうなると風通しが悪くなり、病害虫も発生し易くなるので、花後に伸びた枝を春に花が咲いたあたりまで切り戻します。こうすることで株元にも日光が届き、新しく発生したシュートも良好に伸長します。
2)四季咲き性の品種
(ポートランド系、ブルボン系の一部、ハイブリッド・パペーチュアル系、チャイナ系、ポリアンサ系など)

@冬の剪定
オールドローズの中でも四季咲きの性質を持つものはHTに準じた剪定を行いますが、フロリバンダと同様、HTよりは全体に浅めの剪定にします。あまり深く切りすぎると、枝葉ばかりが伸びて花が咲かない品種もあります。

A花柄切り
オールドローズや原種のバラはHTなどに比べると良く結実します。従って四季咲き性でも実を結ぶと、それ以降の花が咲かなくなります。種子を採る目的や、秋に実を鑑賞する目的がなければ、きちんと花柄を取りのぞき、樹の充実を図ったほうが以降の花付きは良くなります。

B夏の剪定
8月下旬から9月上旬に行いますが、総じてHTのようなきちんとした夏剪定はしません。夏までに伸びた枝が全体のバランスを崩しているのを調整する程度で新しく伸びた枝を2分の1程度に切り戻します。また枝葉が混み合っていたりするところを病害虫の発生を少なくするよう、すく程度です。またシュートの剪定も基本的に行なわず、冬の剪定時まで育成します。ただし勢いが良すぎて幹が太すぎるものや、伸びすぎている場合はこの時期に3分の1から2分の1程度きり戻し分枝させます。
 

3. つる(剪定と誘引)

バラの枝は水平になるほど花芽が出やすくなります。これはバラの生長ホルモンが上方向へ集まる性質があるためで、枝を水平にすると花芽が上を向き易くなるためです。従ってブッシュタイプのように垂直方向に伸びると枝の先端にしか花がつかないということになるのです。つるバラは特にこの傾向が顕著に表れるので、つるバラの場合は他のタイプにない誘引と剪定が行われます。
つるバラの剪定や誘引は樹の水分が減り、枝が比較的柔らかく扱い易い、まだ新芽が動かない1月に行うのが最適です。

1)冬の剪定と誘引
@誘引してある枝を全てはずし、昨年新たに伸びた枝や、シュートも含め絡み合っている枝があれば、それらをほどきます。

Aそれらの枝のうち2年以上経った古枝や細い枝、病気や枯れた枝を全て除きます。古枝でも根元に比較的近い部分から、前年に充実した良い枝(サイドシュート)が出ている場合はこの枝を活かし、その新しい枝より先の古枝は切り落とします。

B枝が整理できたら誘引をします。株の外側の枝から順にできるだけ水平から45度くらいまでの傾きに、誘引し固定します。以降順に下の枝と30cmほど間隔をあけて並行に配置して行きます。

C最後に各枝先を20〜30cmほど、もしくは配置したつるの全体のバランスを揃える程度に切り詰めて完了。

2)咲き柄切り
つるバラの場合春から冬に至るまでの間は特に剪定は行いません。ただし花が終わる頃には種子を採る目的や、秋に実を鑑賞する目的がない限り、花柄を摘み取ります。こうすることで、樹の充実が図られます。また四季咲きの品種については花の下の最初の五枚葉をひとつ付けたあたりでカットすることで、新たな花芽が発生します。

3)シュートの管理
春の花が終わると、育成状況がよければ根元から新しい枝ベーサルシュートが、また誘引してある枝からはサイドシュートが出てきます。これらが出てきたらそれぞれに支柱を真っ直ぐに立て、そこに誘引していきます。それらのシュートは冬までそのまま育成します。ただしベーサルシュートが極端に太い場合は60〜70cm程度伸長した段階で先端を10cmほど切り戻します。こうすることで適当な太さの新しい枝が発生し、冬の誘引時に扱い易くなります。またサイドシュートがある程度伸びた段階でそこから先のもとの枝は剪定します。こうしてシュートが伸びて十分来年の開花枝を確保できることが分った時点で、株全体をみて葉が密になりすぎた部分がある場合は、風通し、日当たりをよくし病害虫を防ぐ目的で、その部分にある古枝を、冬の本剪定に先駆けて根元から取り除きます。

 
4.その他特別な剪定管理

1)ブラインドの処理
芽が伸び葉が展開しても成長が止まってしまった枝や、蕾がつかない枝が出ることがあります。このような枝(ブラインド)が出た場合は下部の芽まで切り戻して、新しい花枝の発生を促します。

2)蕾欠き
HTで普通は一枝に一花しか咲かない品種でも副蕾がつくことが良くあります。この場合、全ての花を楽しみたいときはそのままでも良いのですが、一花が小さく貧弱になるのと、花後の切り戻しのタイミングが遅くなり以降の花つきに影響が出ます。主の蕾にも栄養が集中させるため、副蕾が極小さなうちに指先で折り取ります。その際には主の蕾や葉の付け根を傷つけないよう注意してください。またある程度大きくなってしまったものははさみで切り取るほうが安全です。

3)キャンカーの予防
切れの悪いはさみで剪定すると枝が割れたり、切り口が複雑に傷ついたりして、また剪定角度が水平に近いと切り口に散水した時の水や雨水がたまり、切り口部分から枯れこんでくるキャンカーが発生します。これを防ぐためにも良く切れる適正な剪定ばさみを使用することはもちろんのこと、切り口にろうそくのロウを溶かして切り口を塞いだり、石灰硫黄合剤の20倍液を筆で切り口に塗るなどすると、その発生を防ぐことができます。ただしこの処置は冬の本剪定のときのみ行い、それ以外の時期の剪定の時は、できるだけ切れる剪定ばさみで行い、万一キャンカーが発生した場合は早めに十分健全なところまで切り下げます。

 

4)シュート(ベーサルシュート)の処理
シュートの剪定とそのタイミングは系統によって異なります。
 


@HT、フロリバンダ等のモダンローズの場合シュートが50cmほど伸びるか、先端に蕾が見え始めるまでに、五枚葉をしたから5ないし6枚残してえ、枝先を折り取ります(ピンチします)。その後折り取った下部から新たな枝が伸びますので、HTの場合は最初のときと同様に枝先を折り取ることを繰り返します。そして少なくとも秋までは花を付けさせずに枝を充実させます。またフロリバンダのピンチは1回で十分ですが、育成が良く他の枝よりも高く突出して全体のバランスを崩すようであれば繰り返してピンチします。

Aミニチュアの場合はシュートを伸ばしそのまま花を咲かせても構いません。しかし樹形全体のバランスを保つためある程度伸長してら剪定をしても構いません。

Bオールドローズは基本的にシュートをそのまま冬の剪定まで切らずに伸ばします。ただしあまりに高くなったものは夏の終わり頃に切り戻し分枝させても構いません。

Cつるバラは生育状況がよければ、下部元からベーサルシュート、枝元からはサイドシュートを良く発生させます。これらは支柱を立て冬の剪定誘引まで真っ直ぐに成長させます。ただしシュートがあまり太い場合は、誘引時に扱い難いため元から50cm程度のところで剪定し新たな枝を出させた方が良い場合があります。この場合も新たに出た枝に支柱を添えて、以後は真っ直ぐ上に伸ばします。